050-3138-4847
受付時間
平日 9:00~17:30
定休日
土曜、日曜、祝日

内部統制とは? 会社法と金融商品取引法で経営者に求められていることについて

  1. 中日綜合法律事務所(弁護士 熊谷 考人) >
  2. 企業法務に関する記事一覧 >
  3. 内部統制とは? 会社法と金融商品取引法で経営者に求められていることについて

内部統制とは? 会社法と金融商品取引法で経営者に求められていることについて

会社経営においては少なくとも法令遵守を意識しなければなりません。その上で、利害関係者も多くなる上場株式、大会社などはより厳格に適正性を確保する必要があり、「内部統制」が十分に機能するよう整備することが求められています。

特に株式会社の経営者は「会社法に基づく内部統制」と「金融商品取引法に基づく内部統制」に留意しないといけません。そこで当記事で、内部統制とは何か、そして会社法や金融商品取引法でいう内部統制は何を意味するのか、概要を説明しています。

内部統制とは

内部統制は、会社経営者が健全にその組織を運営していくための活動、と説明することができます。会社法と金融商品取引法のそれぞれで規律が設けられていますので、適用を受ける株式会社を経営する方はその内容を理解しておく必要があるでしょう。それぞれの関係を整理すると下表のようにまとめられます。

会社法 金融商品取引法
目的 業務の適正性を確保すること 財務計算に関する書類、報告書等の適正性を確保すること。
対象企業 大会社と一部の中小会社 有価証券報告書を提出する会社
実施主体 取締役会社 会社
義務の内容 業務の適正を確保する体制整備についての決定・決議を行うこと。そして当該内容を事業報告として株主総会に提出すること。 内部統制報告書を作成すること。そして事業年度ごとに有価証券報告書とともに内閣総理大臣に提出すること。

各法律が求めている内部統制について、以下でそれぞれ説明していきます。

会社法における内部統制

会社法でいう内部統制は、金融商品取引法よりもカバーする範囲が広いです。財務計算等に限らず「業務」全般を対象としており、対象とされている会社の範囲も比較的広く定められています。

《会社法で内部統制の整備が必要とされている会社の範囲》

  • すべての「大会社」
  • 監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社である「中小会社」

※大会社とは、①資本金5億円以上または②負債200億円以上の株式会社のこと。

会社法では、職務執行における法令・定款への適合を確保する体制の整備が必要としています。そこで法令遵守を徹底するための経営方針やその下位にあたる指針等、具体的な基準を策定すること、また、内部通報制度を設けることなども検討していくことになります。

経営者に求められること

会社法における内部統制を実現する上で、経営者にあたる取締役には内部統制システムの「整備に関する決定」「構築をすること」を求めています。決定に関しては、複数の取締役からなる取締役会で行います。

具体的には、「コンプライアンス体制の整備」等により法令・定款に即していることを確保。さらに、損失が生じる危険の管理をするための「リスク管理体制の整備」、取締役による効率的な職務執行を確保するための「職務分掌規程の整備」なども進めていきます。
また株主総会に対して、その決定をしたこと、運用状況などの報告も行います。

なお、体制の整備や適切な運用は、経営者の負っている善管注意義務にも関わってきます。適切に整備・運用されていないときは善管注意義務違反として損害賠償責任を負うこともあります。

金融商品取引法における内部統制

続いて金融商品取引法における内部統制について説明していきます。

こちらは評価・監査の基準や実施基準などの詳細が明示されています。例えば同法の内部統制では何を目指しているのか、何を目的としているのかが次の4点から説明されています。

①業務の有効性・効率性 業務の有効性や効率を高め、会社の目的達成を目指す。
この観点からは「業務の達成」や「資源の合理的利用」の度合いを評価し、適切に対応していくための体制を整えることが重視される。
②財務報告の信頼性 財務諸表や財務諸表に重要な影響を与える情報に関して、高い信頼性が保たれることを目指す。
財務報告は当該組織の状況を確認するために非常に重要であることから、財務報告の信頼性が確保される体制を整え、これにより会社そのものの社会的信用の維持および向上を図る。
※2024年4月からは「財務報告の信頼性」が「報告の信頼性」に拡張される。そこで信頼性確保の対象として非財務情報も含まれるようになる。
③事業活動に関する法令等の遵守 事業活動に関わる法令、さらに規則・基準・定款・内部規程なども含む規律の遵守徹底を目指す。
法令等を遵守する真摯な姿勢は、それが認知されることで会社の社会的信用の向上に繋がり、ひいては業績や株価等の向上にも資することから重視されている。
④資産の保全 資産の取得・使用・処分が適正なプロセスの下で実行されることを目指す。
無形資産(顧客情報、知的財産など)も含む資産について勝手な取得や処分などが起こらないように体制を整備し、資産の保全を図る。

経営者に求められること

上に挙げた4つの目的を果たすため、「リスクの分析や評価」「権限・職責の付与」「効率的な情報伝達と適切な理解の促進」「運用状況に関するモニタリング」などさまざまな施策を実行していく必要があります。

経営者として留意すべきポイントは次のように整理できます。

  • 適正な財務報告の確保に向けて全社的な方針や手続を示すこと
  • 財務報告に関わるリスクへの対応について
  • 虚偽記載のリスクを識別し、分析する
  • リスクを低減するための業務プロセスを定める
  • 職務分掌を明確にする
  • 統制活動の状況を評価して必要な改善を行う
  • 情報伝達に関わる仕組みについて
  • 適切に指示が伝達するような体制を整える
  • 内部統制に関わる情報が適時伝達される仕組みを作る
  • モニタリングについて
  • 施策の有効性を、定時あるいは随時評価できる体制を整える
  • 通報に対応するための体制を整える
  • 確認された不備が適時に報告される体制を整える
  • ITの利用について
  • IT環境への理解と有効・効率的な利用を図る
  • ITを活用した統制業務の体制を整える

法令上の内部統制はすべての会社に義務として課されているわけではありませんが、健全な経営体制の整備は中小企業一般においても重要であることに変わりありません。上場会社や大会社などはもちろん、その他の会社においても組織運営の在り方を一度見直してみてはいかがでしょうか。

中日綜合法律事務所(弁護士 熊谷 考人)が提供する基礎知識

  • 納得できない遺言を無効にするには

    納得できない遺言を無効...

    遺言は、亡くなった被相続人の意思が表現されたもので、遺産の配分を決定するうえで非常に大切な基準となるも...

  • ホームロイヤー契約書

    ホームロイヤー契約書

    ホームロイヤーは、家庭内や日常生活で起こる様々な法律トラブルについて、いつでも気軽に相談できる顧問弁護...

  • 財産管理を弁護士に依頼するメリット

    財産管理を弁護士に依頼...

    ■財産管理とは 財産管理とは、本人に代わって、その代理人が本人の財産の管理に関する法律行為の一部を行う...

  • 遺留分減殺請求

    遺留分減殺請求

    遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは、「遺留分」を侵害されている相続人(兄弟姉妹を除く)が、「遺留分...

  • 顧問弁護士の探し方

    顧問弁護士の探し方

    長期的に、会社の法律業務を頼んだり、相談に乗って欲しい場合には、顧問弁護士契約を結ぶと良いでしょう。一...

  • 株式の相続方法

    株式の相続方法

    相続遺産に株式が含まれている場合、どういう手続きを取ればいいのか悩む方は少なくありません。 株式には...

  • 遺産分割協議の期限はある?注意点も併せて解説

    遺産分割協議の期限はあ...

    相続が発生した場合、誰がどの程度の遺産を相続するのかを決める遺産分割協議が開かれます。しかし、相続人が...

  • 成年後見

    成年後見

    成年者は、未成年者ではないため、未成年者を保護するための制度は適用されません。(民法4条) もっとも、...

  • 相続限定承認

    相続限定承認

    相続限定承認とは、「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべき...

よく検索されるキーワード

ページトップへ